Noriさんがそこにいると、ついつい笑ってしまう。 まわりのどんなひとの考え方もリスペクトするというNoriさんの口からは、いつも前向きな言葉が飛び出してくる。 Noriさんが唯一、厳しくて真剣な表情をするのは、バンスリーを作っている時。
今日は、そんなNoriさんによるバンスリー作りWSの詳細を、参加した私の感想とともに、レポートします。
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世界を旅してインドのヒマラヤに辿り着いたバンスリー職人のNoriさんが、久しぶりに日本に帰ってきた。
私がバンスリーを始めたひとつのきっかけは、Noriさんからバンスリーをプレゼントしてもらったこと。
その頃、毎日のデスクワークで常に目に入る位置に、Noriさんからもらったバンスリーを置いてました。
今は、ほんの少しずつでもインド古典音楽の世界をのぞき、それに触れることができてとても幸せだなって感じてます。
Noriさんのバンスリーがなければ、今の私もない。
すべての出逢いは宝物で、Noriさんとの出逢いも私にとっての宝物。
今日は、そんなNoriさんからの素晴らしいギフトをここで、皆さんと一緒にオープンしていこうと思います。
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楽器を知ることは、自分の奏でる音への意識をさらに繊細にし、音楽を深めることにもつながる。
"バンスリー作りWS" で、実際に自分が奏でている楽器を作りだす工程を見て、聴いて、触れて、感じて、そう思いました。
私は元々物を作ることは好きで、興味の対象も幅広いんですが、バンスリーが出来上がる工程を見て、楽器への理解がより深まり、演奏時の音への意識も変わるなんて驚きでした。
実際に体験してみないとわからないのは何事においてもそうですが、今回は感動レベルでした。
では早速、写真とともに順を追ってご紹介していきます。
これはNoriさんのオリジナルの作り方で、すべてのバンスリーが同じ材料・道具・作り方ではないと思うとのことなので、それだけ先にお断りしておきますね!
● 材料・道具
竹
ノコギリ
ガスバーナー
竹に穴をあけるための鉄の棒
バーナーで鉄の棒を焼くための台
竹の内側を掃除するための長い棒
コルク
サンドペーパー
サンドペーパーを巻きつけるためのお箸のような細い棒
植物性のオイル
ウッドバーニングペン
仕上げ用の糸
蜜ろう
etc…
● 工程
- + * 竹選び - + *
今月のWSでは、F#・C のバンスリーを作りました。
キー(この場合そのバンスリーの音域)によって使う笛のサイズが異なり、F#よりもC の方が高いので、細くて短い竹を使います。
竹の模様で選びたい気持ちもありますが、着目すべきはもうちょっと違うポイント。
厚みによって明らかにわかるくらい音が変わるのでここは重要なポイントです。
最初から良い素材が揃ってはいましたが、できるだけ両端の太さが同じものを選びます。
Noriさんは軽くたたきながら音でこれらを判断していました。
反りが少ない方が作業しやすかったり品質も安定しそうでした。
- + * 下準備 - + *
全体にサンドペーパーをかけて綺麗にします。私には、これから加工させてもらう “竹” や神様への挨拶のように感じられました。
- + * 歌口の穴あけ - + *
見本で計りながら、程よいバランスのところに印をつけ、焼いた鉄の棒で穴を開けます。
竹の焼ける香ばしいにおい、ジュッという音、仙人の髭のように立ちのぼる煙。
心おどる瞬間です。
歌口にサンドペーパーをかけ、そのすぐ上にくるようにコルクを入れ、片側を塞いでいきます。すると音がでます。
この音が、基準となる “Sa” の音です。
- + * Pãncam - + *
次に、”Pa” の穴を開けます。
これは通常演奏には使わないので、裏側に開けます。
けれどもこの”Pa” の穴は、全ての音に関わってくるのでとても重要とのこと。
“Sa” ”Pa” と、穴を開ける度に掃除して綺麗にして、タンプーラやチューナーなどを使い、ピッチ(音の高さ)を正確にあわせていきます。
ピッチや音質は、穴を開ける位置だけでなく、穴の大きさ・形・角度、その他様々な条件に左右されるようです。
- + * Da、Ni、Sa、Re、Gaの穴あけ - + *
続いて、Da、Ni、Sa、Re、Gaと、順番に穴を開けていきました。
私はすべての回に参加させていただいたので実感したんですが、竹の厚みによってピッチ調整の難易度は変わってきます。
薄くて軽い竹だと比較的調整しやすく、吹き手によって変わる音質の幅もそこまで大きくはなさそうです。
厚みのある竹になると、穴の角度や形状も工夫することができますし、吹く時の息の入れ方によってもピッチや音質が変わりそうです。
温度によってピッチが上がったり下がったりもするので、厚みのあるものほどその影響がゆっくりになると思います。
- + * ピッチ調整 - + *
調整しながら開けていきますが、すべての穴が開いた後にさらに、細かなピッチの調整をしていきます。
ここまで至る段階で、普段から厳密にピッチを意識しながら練習している人ほど、自分に合ったオーダーメイドの良いものが作れると思います。
息を強く入れるほどピッチは上がり、弱く入れるとピッチは下がるからです。
安定した呼吸が理想ですが、急に変えられない呼吸や吹き方の癖もあるので、実際にそのバンスリーを演奏する人が吹きながらピッチを合わせていけるのが一番だし、そうやって作っていくうちにどんどん愛着が湧いて来ます。
作業自体はNoriさんにしていただいた部分が大半ですが、歌口の穴あけから一緒に過ごしたバンスリーへの愛着は、完成品を買った場合と比べることができません。
- + * サンドペーパーがけとオイル仕上げ - + *
すべての穴のまわりを、運指がスムーズにいくように綺麗にみがいていきます。
とは言え穴を広げすぎると音が変わってしまうので注意が必要です。
全体にサンドペーパーをかけ、綺麗に拭いたら最後に、Noriさんがオススメのアプリコットのオイルを塗ってくださいました。
- + * 模様入れや糸巻き - + *
ここまででバンスリーは既に完成していますが、希望の人はウッドバーニングペンを使って模様入れをしました。
私は後日、糸巻きを教えていただきました。
糸に蜜ろうを塗ってから、巻き始めと巻き終わりの両端を入れ込む形で仕上げる巻き方です。
糸を巻くことによって割れ防止になったり、やや音質も変わったりします。
今回は、好きな色の糸を巻かせてもらいました。
グラデーションの糸が可愛くて、世界で一本のバンスリーにテンションMAX!
- + * 完成 - + *
いかがでしたか?
少しは、バンスリー作りを疑似体験していただけたでしょうか。
私の次の夢は、ヒマラヤに帰ったNoriさんのもとで、もう一度バンスリー作りを教わることです!
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楽器を知ることは、自分の奏でる音への意識をさらに繊細にし、音楽を深めることにもつながると書きましたが、丁寧に吹き込んでいくと今度はそれに応えるように楽器が育っていってくれます。
バンスリーは、インド古典音楽で演奏される楽器の中でも最もシンプルな構造だから、こうやって気軽に体験することができました。
とは言え、こんなに身近にバンスリー職人さんが来て教えてもらえる機会があるなんて、なかなかありません。
とても恵まれていて幸せなことだと思います。
吹く人のあつかい方次第で、音色そのものが驚くほど変わってしまう楽器だからこそ、制作の工程を見て体験することには大きな意味があったと思います。
自分のことを "フーテンのNoriさん” と名乗るNoriさんの憧れのひとは、"フーテンの寅さんだそう” 笑
"フーテンのNoriさん” はまた3月頃にふらりと京都に立ち寄ってくださるそうなので、バンスリーを作ってみたい方はぜひぜひ、リクエストをお寄せください。
お待ちしています!
最後まで読んでくださってありがとうございました^^
ABC INDIA!
Ai
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